奨学生の声
Voice
2024年度 海外留学支援奨学生 内木 睦さん
私は2024年8月から2025年5月まで、アメリカ合衆国ミネソタ州にあるミネソタ州立大学モアヘッド校に留学し、これまでの人生で最も刺激的な9か月を過ごしました。学業・課外活動・友人関係のいずれをとっても、日本では得られない貴重な経験をすることができ、今ではそのすべてが自分の糧になっていると実感しています。
① 学業について
以前から興味のあったアメリカのマーケティング手法について、実践的に学ぶことができました。グループで動画を作成したり、自分で広告を企画・制作したりと、日本の大学とは異なるアプローチで学ぶ機会がありました。特に、グループメンバーとの意見交換や役割分担を通じて、異なる価値観や考え方を尊重しながらコミュニケーションを取る力が養われました。
② 課外活動について
活動が休止していた「Japan Club」を復活させ、自ら代表として運営を行いました。2週に1回、日本の文化を紹介するイベントを開催し、けん玉や書道の体験を通して参加者と交流しました。2月には大学内の大きなホールを借り、和食を振る舞ったり、浴衣の着付け体験ブースを設けたりと、大規模なイベントも実施しました。日本にいるときは「少し面倒だな」と感じてしまうようなことも、留学中はすべてが貴重な経験だと感じ、恐れずに積極的にチャレンジできました。
③ 友人について
Japan Clubでのイベント(一番右が私です)
年齢・性別・国籍を問わず、さまざまな人と深い交流を築くことができました。車がなければ移動が不便な地域だったため、車を持っている友人に助けてもらいながら、一緒にスーパーへ行ったり、休日に出かけたりしました。また、友人の家に招かれてお互いの国の料理を作り合ったり、お互いの国のことやアメリカでの経験について夜遅くまで語り合ったりと、異国の地ならではのかけがえのない時間を過ごしました。
「多くの友人ができた」「自己成長につながった」といった感想は、確かに多くの留学生が語ることかもしれません。しかし、私にとって大切なのは、「自分だけのオンリーワンな経験」ができたということです。出会った人々は、私の人生に大きな影響を与えてくれましたし、留学中に培った経験や気づきは、私自身の成長にとってかけがえのないものとなりました。
たとえ似たような体験を語る人が多くいたとしても、私自身が出会った人々や経験したことは、間違いなく私だけのものであり、それこそが留学の本当の意味だったと感じています。
大学生や社会人が集まって各国の手料理を振舞う
集まりで、日本食を作った際のもの(手前が私です)
友人宅で生地からパスタを作ったときのもの
(左側の真ん中が私です)
①リサーチクエスチョン
日本の多国籍企業がBOP(Base of the Economic Pyramid:経済的ピラミッドの底辺)層に対してビジネスを展開・拡張することは、有効であり望ましい戦略と言えるのか?経済大国であるアメリカの事例をもとに、その可能性と課題を考察する。
②研究の背景と目的
近年、BOP層と呼ばれる年間所得が約3,000ドル以下の世界人口約40億人に向けたビジネスが注目を集めている。この層は世界全体の約7割を占めており、市場としてのポテンシャルは非常に大きい。一方で、貧困やインフラ不足、教育水準の格差といった社会課題も併存しており、単なる「市場拡大」としてではなく、地域や人々の生活を持続可能な形で豊かにする視点が欠かせない。
私は、津田塾大学で開発経済学や文化人類学を学び、マーケティングの基礎とともに「社会構造と文化的背景を理解した上でのアプローチ」の重要性を学んできた。今回の研究では、アメリカ留学を通じて得た視点と体験をもとに、アメリカ型のBOPアプローチが日本にも適用可能かを考察し、さらに日本独自の可能性について探究することを目的とした。
③研究方法とアプローチ
留学中、当初予定していたBOPビジネスに特化した授業を履修することはできなかったものの、代わりに受講した”Social Behavior”や”Principles of Marketing”の授業を通じて、人間の行動心理と購買行動の関係性について深く学ぶ機会を得た。
また、ミネソタ州での生活経験から、アメリカの経済的成功の一因が「消費」ではなく「生産」にあるという新たな視点も得た。特に、広大な土地を活用して行われるトウモロコシや小麦の大規模農業、効率的なサプライチェーンの仕組みを目の当たりにし、日本とのスケールの違いを実感した。これは、日本が単純にアメリカの方法を模倣してもうまくいかない可能性を示唆している。さらに、現地で暮らす人々との日常的な交流を通じて、商品の「品質」よりも「価格」が購買決定に強く影響している傾向を何度も目にした。実際、アメリカでは極端に品質の低い商品が安価で販売されている光景も珍しくなく、日本の「一定の品質基準を下回らない」という暗黙の前提とは対照的だった。
こうした体験と学びから、「アメリカの手法をそのまま日本が取り入れることには限界がある」と考えるに至った。
④結果と洞察
これまでの日本企業によるBOP層へのアプローチ事例を振り返ると、単に安価な製品を大量に供給する手法ではなく、その国の社会構造や人々の生活習慣、文化的背景を深く理解し、それに沿った方法で事業展開を行っているケースが多いことが分かった。たとえば、現地の女性コミュニティを活用した販売ネットワークの構築や、宗教的な価値観に配慮した商品設計など、「人」や「社会の仕組み」を尊重したアプローチにより販売を促進している。
また、人間の行動心理、たとえば「他人と同じものを持ちたい」「有名ブランドに信頼を置く」といった傾向は、どの国の消費者にも共通して見られる。これらの心理的特性を理解し、それに基づいたマーケティング戦略を構築することで、BOP層向けビジネスにも持続可能な成長が見込めるのではないかと考える。
日本にはアメリカのような広大な土地や資源はないものの、「品質への信頼」「きめ細やかなサービス」「現地文化への配慮」といった強みを活かすことで、異なるアプローチを行い成功できる可能性がある。今後は、単なる価格競争に陥ることなく、人間の心理や社会の構造を的確に捉えた形で、日本独自のBOPビジネスモデルを確立していくことが重要である。
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