奨学生の声

Voice

2021年度 海外留学支援奨学生 矢部百香さん

ユトレヒト大学院(Universiteit Utrecht)/オランダ
令和3年8月25日出国

日本は台風が接近しているとのニュースを見ました。コロナウイルス第5波もピークを過ぎたと言われていますが、永井様をはじめ育英会の方々もその後お変わりありませんでしょうか。

こちらに到着後、10日ほどロータリークラブ様のホストファミリーにお世話になり先週自分の住まいに引越しました。先週から授業も始まり、生活を整えながら、課題に追われる日々ですが楽しく過ごしております。

所属している「サステナブル・デベロップメントコース」では経済やプロダクト・デザイン、ビジネス、環境科学、哲学など多種多様な学問を専攻していた学生が集まっており、授業も大変楽しくここで勉強ができることを大変ありがたく思うと同時に、2年間という時間をいかに充実したものにすることができるのかプレッシャーも感じております。

ユトレヒトはローマ時代から続く歴史ある街で、永井様がおっしゃられたように「ユトレヒト条約」が結ばれた地でもあります。市街地にあるユトレヒト大学の講堂にて条約が結ばれたようなので、時間がある際に見学したいと思っております。

こちらではコロナウイルスも落ち着いてきており、マスクの義務化もありません。ただ、私を含め、アジア人学生は比較的コロナウイルスに対して危機感を持ち続けマスクをしている学生が多い印象です。現在、75人以下の授業は対面で行うことができ、私もキャンパスにて授業を受けています。ワクチンも大学で受けることができ、政府に申し込むと無料で4つの自己検査キットも送られるというシステムがあり、コロナと共存しながら「日常」を取り戻すという日本とはまた異なるアプローチに感心しました。先日保健省に電話したところ、日本で取得したワクチンパスポートもオランダやEUで使用できるQRコードに変換してくれるとの回答を得たので安心しました。来週市内のセンターにて申し込みすることになっています。

授業は現在2つを受講していますが、週にそれぞれ2回授業があり、授業の進むスピードや内容が濃く、まだ始まって1週間ですが既に10本の論文を読んでいます。本当は3つ目も受講したかったのですが、大学からは1つのターム(9週間)では学生のキャパシティ的に2つ以上取らない方が良いとのアドバイスを受けました。大変だなあと思う時も正直ありますが、興味があることを好きなだけ、そして、研究の最前線で活躍されている教授のもとでこのご時世に海外で勉強できるという環境には大変恵まれていると感じております。

先日オランダの銀行口座も開設し、昨日日本からネットで送金をし現在着金を待っているところです。金銭の心配をすることなく、安心して生活し勉強に没頭できるのも育英会の皆様のご支援があってこそだと心から思っております。いつも本当にありがとうございます。日本はまだまだ残暑が続いていると聞きました。永井様、そして育英会の皆様どうぞお身体ご自愛くださいませ。また近況報告をさせていただきます。

写真は、ユトレヒト大学の「サイエンスパーク」と呼ばれているキャンパスとユトレヒトの中心地の街並みです。

サイエンスパークで授業を受けているのですが、オランダの建築家がデザインしたユニークな建物が多くどこか近未来的な感じがしています。ユトレヒトの市街地は運河が流れていて、晴れている日にはよくカヌーやボートに乗っている人々を見かけます。大変趣のある素敵な街並みです。

令和3年12月28日

9月から現在までのご報告をさせていただきます。

1ターム目(9月上旬から11月上旬)

1週目にはホストファミリー宅から現在住んでいる学生アパートへの引越しもあり、バタバタと過ごしておりました。所属するプログラムでは、ほぼ全て受講する講義が決まっており、1年目は自分で授業の選択ができません。1ターム目には「地球システムガバナンス基礎論」と「サステナブル・デベロップメント論」の2つを受講しました。授業はそれぞれ週2回づつあり、それぞれ授業前に数本の論文が課されているため毎日論文を読む日々でした。週末も課題や授業準備に追われなかなか休むことができていなかったな、と今振り返ってみると思います。

「地球システムガバナンス基礎論」では、現在サステナブル・デベロップメントガバナンス分野で注目されている研究テーマについて、それぞれ最先端の研究をされている教授陣から学びました。今後研究したいと思っている気候変動ガバナンスはもちろんのこと、この授業を通して新たな関心分野も増えました。

「サステナブル・デベロップメント論」ではプログラムの名前にもなっているサステナブル・デベロップメントとは何かということを軸にして、どのように持続可能な開発を考えるのか、またどういった研究手法が必要なのかといった、今後2年間の学びの基礎的な部分を学んでいきました。

タームの最終週は期末テストや課題に追われていましたが、友人と互いに励まし合いながらなんとか乗り越えることができました。オランダは10段階評価で、9点、10点を取ることが不可能と言われているほど成績評価が厳しい国です。テストも難しく、成績評価が心配でしたが無事授業を合格することができた時は本当に嬉しかったです。同時に、瞬く間に過ぎて行った1タームを無事乗り越えることができ、本当に良く頑張ったなあ、としみじみ感じてしまいました。

2ターム目(11月中旬から)

今期は「システム思考、シナリオ、指標 (System Thinking, Scenario and Indicators)」と「ガバナンス理論」の2つを受講しています。今期は授業前の準備(論文数本)に加え、授業の復習もできるだけその日のうちに行うようにしており、前期と比較して効率的に勉強ができていると感じています。週末は課題の提出ない限りは必ず1日は休むようにしており、メリハリのついた生活を送れるよう心がけています。

「システム思考、シナリオ、指標 (System Thinking, Scenario and Indicators)」では、サステナブル・デベロップメントを考える際に必要なモデルやシナリオ形成について学んでいます。課題では、「ベジタリアン」「ビーガン」「肉食(一般的な食事)」が農業地に与える影響をモデルを作成して2100年までのシナリオを作成することが課せられました。動物性食品の摂取が地球環境へ与える影響に関しての研究が近年盛んに行われており、今回の課題を通して改めて、人間の食生活を見直すことが持続可能な将来に繋がるのだと痛感しました。

「ガバナンス理論」では、どのような要素が政策の停滞や転換を引き起こすのかについて分析するための理論について学んでいます。将来のキャリアでも政策立案に携わりたいと考えているなか、このように政策に関する様々な視点を学べることは大変おもしろいです。今期も瞬く間に過ぎており、現在迎えた2週間の休みを有意義に使い、しっかりと休みをとって残りの3週間も駆け抜けたいと思います。

日々の生活

1ターム目終了後の1週間の休みに、友人とアムステルダムへ初めて行ってきました。ユトレヒトとはまた異なる街並みや雰囲気があり、歩き回るだけでとても楽しかったです。また、別の日には、オランダの首都機能があるデン・ハーグにも足を伸ばし、有名な「真珠の耳飾りの少女」を見にマウリッツハイス美術館へ行きました。あまり混雑していなく、ゆっくりと有名な絵画の数々を見ることができました。オランダには「ミュージアムカード」というオランダ国内の美術館へ回数無制限で行くことができるカードがあります。€64(日本円で約8千円ほど)で購入でき、1年間有効なので今後の美術館・博物館巡りがとても楽しみです。

大学生活

オランダは世界で最もコーヒーの消費量が多い国として知られており(statista)、キャンパス内の全講義棟のほぼ全ての階にコーヒーマシーンがあります。ユトレヒト大学は1授業が約2時間と長時間のため、授業の途中には10分程の休憩時間が設けられているのですが、休憩時間になると学生だけでなく、教授もコーヒーマシーンに向かい休憩をとっています。授業のサイズによっては1ターム目からオンライン授業もあったため、対面授業でキャンパスに行ける日は、休憩時間にコーヒーを飲みながら友人たちと談笑するのが日々の楽しみのひとつです。

ユトレヒト大学では「グループワーク」が多く課題に採用されており、これまで行ってきた課題はほぼ数人の学生と共同でエッセイを書くというものでした。これまで、プレゼンテーションやプロジェクトではグループワークの経験がありますが、エッセイ作成は初めての経験でした。初めの課題ではやり方に戸惑いがあったものの、回数をこなしていくうちに、徐々にコツや感覚を掴むことができました。コミュニケーションや仕事の進行度の確認、そして何より各自が同じ方向を見て課題を理解しているのかが大切であると学びました。今、日々学んでいることは今後社会に出て、様々な文化背景を持つ人々と仕事をする際に役立てたいと思います。

コロナウイルスの状況

9月下旬にコロナ規制の解除後、季節が冬に近づいていることもありこの数ヶ月間連日コロナウイルスの感染者数が増加の一方を辿っていました。そして、11月上旬になると連日新規感染者数が1万人を越してきており、11月13日からは3週間の部分的ロックダウンが開始されました。11月15日から開始した2学期目は当初全て対面授業で行う予定でしたが、政府の発表を経て75人以上の授業は全てオンラインに移行になりました。ロックダウンとはいえ、日本の緊急事態宣言のような形で、スーパーなどの生活必需品の販売店は夜20時までの営業、それ以外のお店やレストランは全て午後6時に閉店することとなりました。国民の約8割が2回目の接種を終えていますが、マスクを日常的にしていないこと、ソーシャルディスタンスがきちんと取られていなかったことが今回の感染者増加に繋がっているのではないかと思います。

11月中旬からは毎日感染者2万人を超えており、部分的ロックダウン(時短営業)が実施されています。現在受講している講義の教授も家族がコロナに感染してしまい自主隔離を余儀なくされるなどコロナが大学でも影響しています。クラス内にも徐々に感染した学生が増えてきており、コロナウイルスが身近に迫ってきていることを実感しています。そして、12月19日からは、オミクロン株への懸念と、3回目のワクチン接種準備の時間を稼ぐため、ハードロックダウンが施行されています。大学の授業も全てオンラインへ移行となり、スーパーや薬局以外は全てお店が閉まっている状況です。1月上旬に再度政府が政策を見直すことになっていますが、大学からは2学期目(2月上旬まで)の授業は全てオンラインとなることに決定されました。キャンパスで授業が受けられないこと、そして友人に会えないのは残念すが、なんとか冬を乗り越え春にはこの状況が収まることを願うばかりです。

長くなってしまいましたが、毎日健康に、勉強に励めていることが本当に恵まれているなと感じております。このように充実した日々を過ごせることができるのも育英会の皆様の温かいご支援のおかげです。いつも本当にありがとうございます。また、3ターム目に近づきましたら近況報告をさせていただきます。

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