奨学生の声

Voice

2018年度 海外留学支援奨学生 八田直樹さん

スイス連邦工科大学チューリッヒ校機械工学科(Eidgenössische Technische Hochschule Zürich)/スイス
留学の目的
チューリッヒ市内

チューリッヒ市内

スイス、チューリッヒでの約12ヶ月の交換留学についてご報告いたします。

留学前に私はロボット制御の研究室に所属していました。ドローンの自律飛行を応用する研究を行っており、そうした研究を進める中で、ロボット制御で有名なスイス連邦工科大学について知りました。私は海外の大学院に進学することに興味があったのですが、今まで海外に一度も行ったことがなかったこともあり、正規生として留学する前に1年間交換留学をすることで、実際に海外で生活することや大学で学ぶことがどのようなものか体験してみようと思いました。留学に行くことに不安はあったものの、研究室の先輩から、留学での楽しさ、異文化での生活の苦労など様々な話を聞き、今まで漠然と行きたいなと考えていた留学を自分もしたいと強く思うようになりました。

スイスでの生活

実際に住んでみてスイスは非常に住みやすい国だと思いました。治安も非常によく、街の人は大変親切です。例えば、チューリッヒはドイツ語圏なのですが、私はドイツ語がまったく話せないので英語で質問しても嫌な顔ひとつせずに丁寧に教えてくださる方が多かったです。ほぼすべての駅、スーパー、銀行で英語が通じるので生活をしていて不便に感じることはまったくありませんでした。公共交通機関も非常に発達しています。市内には路面電車がくまなく張り巡らされており、車や自転車がなくても行きたい場所に路面電車を乗り継いで簡単に行くことができます。寮から大学へもそれで通っていました。ただ物価が高いです。家賃、医療費がとても高く、私の友人は住む場所を見つけるのに大変苦労していました。そのため研究室から生活費をもらえる博士課程の学生はともかく、そうした収入のない修士、学部の学生にとっては生活費をやりくりするのが大変です。

大学での学習

私は主にロボットの制御に関係のある、ロボット工学、制御工学といった授業を履修しました。どの授業もとても丁寧に教えてくださる印象を受けました。授業の動画、ノート、宿題、その解答はすべてウェブサイトに随時アップロードされ、万が一授業に出席できなかったときでも難なく内容をカバーすることができます。多くの授業が講義と演習のセットになっています。ただ演習といっても多くの学生は事前に課題を解いてきたうえでTAに質問するために来ていて、自分の疑問が解決したらそのまま帰る学生もいました。1つ残念だったことは、私は修士課程の授業を履修したのですが、日本の大学の授業のような座学形式の授業が多くなってしまったことです。実際にロボットを動かすことができる授業などは人数制限があるために交換留学生は履修できないことがあり残念でした。後半の学期からは授業と並行してある博士課程の学生の下で指導してもらいながらプロジェクトを進めました。各研究室はホームページでセメスタープロジェクトを掲載していて、これはある一定の期間、博士課程の学生の下で指導してもらいながら研究を進めるということを行うものです。交換留学生もセメスタープロジェクトには応募できるので自分の興味のあるものについては毎回応募していました。ただし内容によっては応募者が殺到するものもあり、その多くは修士の学生であったりするので、学部生である自分はなかなか受け入れてもらうことができませんでした。しかし、前期の授業で何回か質問しにいったTAの方が私のことを受け入れて下さり、貴重な経験をすることができました。

学生生活
寮の友達と

寮の友達と(右:本人)

私が住んでいた寮はキッチン、お風呂、トイレが4人で共有だったため、留学が始まってまもないころは彼らによく助けてもらっていました。また大学のスポーツ団体が開催しているバドミントンのレッスンにも頻繁に行きそこで友達をつくることができました。私のようにそこまで英語に自信がない人は、まずはスポーツを通じて友人をつくることが一番よいように思えます。タンデムラーニングという自分の母国語を相手に教えあう活動にも参加し、ドイツ人の友人とお互いにドイツ語、日本語を英語で教えあっていました。

留学を振り返って

今回の留学を通して外国で生活することにあまり抵抗がなくなりました。今までは日本で就職することしか考えていませんでしたが、今は海外で就職することも選択肢の1つであると思っています。また学生生活を通じて数多くの志が高い友人に出会うことができました。自分の専門分野にこだわらず幅広く本を読むこと、疑問に思った点は必ず自分なりの解釈や友人との議論を通じて理解することなど彼らの学問に対する姿勢に私自身も影響を受けました。彼らとは今でも交流が続いており世界中に友人を得ることができました。外国人とうまく意思疎通ができたことによって自分のコミュニケーション能力に自信がつきました。自分の意見を伝えるのにはジェスチャーや図表を見せるなど様々な方法があり、必ずしもすべて英語で伝える必要はないと感じました。ただ相手の意見を理解するためにはある程度のリスニング力が必要であり、これに関してはもう少し向上させなければと思いました。

このように今回の留学は私に非常に多くの学びと経験を与えてくれました。この留学を実現することができたのも、飯塚毅育英会のご支援のおかげです。本当にありがとうございました。

一覧ページに戻る