奨学生の声

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2018年度 海外留学支援奨学生 藍原健豊さん

タイ国立開発行政大学院大・ニーダ経営大学院(National Institute of Development Administration)/タイ
留学体験記
藍原健豊さん

左:本人

私は平成29年の8月から平成30年の9月までタイ国立開発行政大学院大学(National Institute of Development Administration、通称NIDA)の経営修士課程(MBA)に留学しました。

タイは王国であり仏教の信仰が強い国です。また、中華系の移民が多いため、タイ国内では中国語の表記があちこちに見られ、中国文化の影響も強く残っています。国民は国王を慕っておりタイ国内のいたる所に国王と王女の肖像画が飾られています。私がタイで留学を開始したわずか2ヶ月後の10月にラーマ9世国王が崩御され、タイ国内は大きな混乱と悲しみに包まれました。私は1人の日本人、そして外国人として動揺を隠せませんでした。大学院の期末試験が延期されるなど、学習予定にも変更や若干の遅れがありました。国王の崩御後は国民は黒もしくは白の私服を身にまとい生活するということが約1年続いたので私も急いで黒いシャツとズボンを購入しに商店へ行ったことが記憶に新しいです。

当大学院はバンコクにあり、タイ国王によって設立された研究機関で修士課程と博士課程のみを提供しています。私は入学時は2年制のEnglish MBAに所属していましたが、ビジネストリップやインターンシップ制度が活用できる1年制のAccelerated MBAに2セメスター目に編入しました。日本人は大学院でも私を入れて2名しか当時はおらず、クラスも大半がタイ人学生でした。留学生は主に中国や東南アジア圏(ベトナム、ネパール等)がいましたが、大学でタイ語を専攻していた留学生が多く、すでにタイ語が流暢な学生が目立ちました。1クラス10人以下という環境でしたので集中的に授業に参加できる環境で、当プログラムはすべて英語で行うものでしたが、セメスターによっては私ひとりが留学生で他全員がタイ人ということもありタイ語でグループワークやディスカッションをしてしまうことが大半だった為ついていけず、朝から夕方までの授業の間黙っているという大変な時期も過ごしました。MBAの授業は主に経営管理に関する学問を体系的に学び、経済学、会計学、オペレーション、金融、マーケティング、人材育成管理学、統計学など様々です。一応MBAは文系の学問に属していますが、実際に習う内容は非常に理系的なので私は数学を始めとした理系が大変苦手だったので苦労しました。一方、エンジニア出身の学生はMBAでは大変活躍します。統計や分析を行い半べそかきながらPCとにらめっこしていた日々が懐かしいです。この経験を通して仲間に頼る重要さを身をもって知りました。人には各分野で得意なものがあるように、私は比較的、他学生よりも英語が得意で唯一の日本人ということもあり、日本の市場分析を行い、タイ市場との比較などを任されました。一方で高度な統計分析などはエンジニアや薬剤師の友人学生に頼りました。

研究論文では私は主に日本人を含めたタイのバンコクへ訪れる観光客を対象とした商品を提案するというものでした。バンコクは世界で最も外国人が訪れる首都です。日本でもタイへの旅行人気の需要は非常に高いです。タイはフルーツ大国と言われているほど採れる果物の種類が豊富であり日本では育たない物も多くあり、そのフルーツを利用したスムージーを商品として展開するというものでした。日本では健康志向が強く、スムージーは数年健康食品の1つとして飲まれて来ました。この研究を通してタイの日本どちらの市場も知ることになり、また観光としてのトレンドを把握することができ大変興味深い経験となりました。

修士号学位授与式

修士号学位授与式

タイでの生活は大変楽しくもあり、また苦労もありました。タイの物価は安く経済的に大変助かりましたが、購入した食べ物に当たり、何度もお腹を下してしまいました。食中毒が原因で3度入院をしてしまい、時には授業に出ることができなくクラスのプロジェクトチームメイトに迷惑をかけたこともありました。日本と環境が異なり、日本人は特に免疫がないため、注意が必要です。バンコクは世界有数の渋滞大国ですので移動手段はNIDAのそばを流れる川で運行されている船を利用していました。片道数十円で遅延もないため重宝していました。また、タクシーや3輪タクシーのトゥクトゥクでは外国人に対して過剰な料金を要求してくることがよくあります。私も何度も騙されたことがありましたが、それに屈せず交渉できるようになりました。ついには市場で根切りを交渉することができるぐらいにもなりました。健康に気を使い、NIDAにあるジムで週3~4回ほど筋トレを行なっていましたが、そこでも他の学部のタイ人との交流が生まれ横の繋がりを生むとても良い経験となりました。

タイは基本的に親日で私は日本人だと知ると優しくしてくれるタイ人がほとんどで、日本文化も大変人気でショッピングモールに行けば日本に馴染みがあるレストランがいくつもありましたので和食が恋しいときでも困りませんでした。NIDAでは私は留学生でも少ない日本人であり、また駐在員ではなく学生として、またタイのバンコクに住んでいる日本人として私は珍しかったらしく、タイ人から日本について様々な質問を毎日のようにされました。特に質もされたのが日本の労働スタイルについてでした。タイには日系企業が沢山あり、そこへ勤めているタイ人も多くいるため興味深いようです。日本人は勤勉である反面、過労死問題が深刻であるとタイ人は考えているようです。私は日本人として、またタイ人の一緒に生活している立場として考えさせられました。

私はタイ語が流暢ではありませんが、英語と僅かなタイ語を利用して2年間タイ人と交流を図ってきました。セメスター間の休み期間にはタイ人のクラスメートに連れられタイの至る地方を巡ることができ、勉学以外で得られたこれらの経験は掛け替えのないものです。

修士課程の2年間を経て、無事に修士号を夢である海外の大学院で取得できたのは奨学金援助してくださった公益財団法人飯塚毅育英会様のお陰です。本当にありがとうございました。

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